強磁性形状記憶合金の開発
強磁性形状記憶合金は磁石と形状記憶合金の両方の性質を兼ね備えた材料です。TiNi合金のような通常の形状記憶合金では温度と応力により形状制御しますが、強磁性形状記憶合金では、これらに加えて磁場を用いる事ができます。その方法としては、磁場によるマルテンサイト変態(またはその逆変態)を誘起する方法、または磁場によるマルテンサイト相の双晶変形を利用する方法(双晶磁歪、図1)の2通りが考えられます。

双晶磁歪の機構.

Ni-Mn-Ga合金(図2)ではマルテンサイト相に1T程度の磁場を負荷することで双晶磁歪が発生する事が報告されています。この合金はL21構造を有するホイスラー化合物の一種で、化学量論組成(Ni2MnGa)の合金が熱弾性型のマルテンサイト変態を起こすことはWebsterらによって最初に発見されました。化学両論組成のNi2MnGa合金ではキュリー温度が約363Kと比較的高いが、マルテンサイト変態温度は202Kと低く、実際に磁気アクチュエータとして使うには、動作中の温度上昇も考慮するとキュリー温度・マルテンサイト変態温度が373K以上で且つ室温での飽和磁化・磁気異方性が高い材料が望まれています。

Ni-Mn-Ga合金の光学顕微鏡写真.

図2にはNi-Mn-Ga合金の組成と変態温度の関係を示します。ここで横軸には合金の化学組成の代わりに価電子濃度(e/a)をとっています。価電子濃度は合金元素の価数電子数 (Ni:(3d)8(4s)2, Mn:(3d)5(4s)2, Ga:(4s)2(4p)1と仮定)を組成で平均した値です。図のようにマルテンサイト変態温度はe/aと共に大きく増加しますがキュリー温度(TC)はそれほど変化しません。一方で磁化は図3に示した様にe/aと共に減少する傾向にあり、3元系Ni-Mn-Ga合金ではマルテンサイト変態温度と磁化を共に高くするのは困難であることが分かります。この点を克服すべく当研究室では熱処理、第4元素の添加による特性改善が必要だと考え、研究を行っています。

Ni-Mn-Ga合金の変態温度の組成依存


Ni-Mn-Ga合金の室温磁化の組成依存.


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